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February 25, 2007

下流志向 内田樹著 講談社

 内田先生の新著である。先生のblogでは、著書の中では、かなり売れている部類らしい。

 さて、著者自体も、神戸女学院の教壇に立ち、日々学生と接している経験を踏まえて、80年代半ばのいわゆる「バブル経済」以後、これまでの「総中流社会」と思われていた国内で、如何にして階層化社会が構築されようとしているかと述べた書籍です。

 著者によるとこの本の主題は、「学びからの逃走・労働からの逃走」だそうです。一見すると教育論で、私も表紙の副題から、教育書だと思っていました。確かに、教育現場に携わる著者が示す実例は、大変説得力があります。

 物心が着く前から消費者として社会との扉が開いている子供たち。
 消費者の視点で、教壇に立つ先生と対峙する子供たち。
 子供たちは、自分で「選択している」と思っていながら、小説「嫌われ松子の一生」の主人公のように、自らの意思で下層化を選択していく子供たち。
 これは、悲劇です。

 子供たちにとって、先生は、いわば「テレビショッピングのバイヤー」と同じ様です。テレビならば、チャンネルを変えればいいが、教室では変えることはできない。すると彼らは、「不快」という貨幣で、先生に対して対価を払うと推測しています。
 著者は、しきりに本書で、「教育は受けてみないと結果はわからない」と述べています。そのとおりだと思います。荘子は「無用の用」という言葉を残しています。「一見、役に立たないように見えるものが、却(かえ)って非常に大切な役を果たしているということ。」という意味です。
 教育も一通り受けてみて、その中から可能性(有用)を見出す(なんておこがましいですが^^;)ことなんじゃないのでしょうか?
 語学を学ぶときに、こんなことを聞いたことがあります。

 「毎日続けていくと、(階段を上るのと同じで、)振り返ると、遠くまで見通せるようになる」

 多分、出典はもっとシンプルだったと思うのですが...

 著者は、質疑応答で「スターウォーズ」シリーズに触れています。私は、エピソード2、3は、未見ですが、著者は、このシリーズを黒沢明の「姿三四郎」をオマージュした映画だと述べています。そして、これらは「師弟関係を描いた」映画とまで言い切っています。おもしろい、視点です。
 アナキン・スカイウォーカーは、師であるオビ=ワン・ケノービを超えたと思った時点で、成長を止めてしまうが、一方のオビ=ワンは、アナキンが離れていっても、彼の師であるヨーダへの敬意は変わらず、成長を続け、アナキンを負かしてダースベーダーにしてしまう^^;

 著者は、この「師弟関係」復活が、この事態を変化させることができると結論付けています。

 社会は、振り子の様である。教師への威厳が失われる様に振り子が大きく傾いたのは、戸塚ヨットスクールなどの問題で、教師の指導に問題が言われてきた時期と同じかと思います。また、この振り子が大きくゆれる時期なのでしょうか?
 でも、実際の師でなくても、「心の師」を持つことでも、「師弟関係」が構築できるであろうと述べています。

 「リスク・ヘッジ(risk hedge)」という言葉を本書の中で見かけます。hedgeとは、「(賭(か)けで, 別のほうにも賭ける)両賭け, 「押さえ」, 「保険」;ヘッジ, 掛けつなぎ(反対売買によって, リスク・エクスポージャーを減らすこと)」(プログレッシブ英和中辞典より)
 本書では、「半丁ばくち」にどっちも賭けると説明しています。つまり、現状維持志向です。本書では、そのような考え方を持つ為政者が国内からいなくなったとまで述べています。確かに、リスク社会と言われながら、リスクをヘッジする方法は、誰も教えてくれません。
 もともと、経済用語ですから、資産運用については、よく言われてます。たとえば、「貯金(現金)」「証券」「貴金属」「不動産」に資産を分けることとか。
 でもね、人生のリスク・ヘッジはなんなのでしょうか?結婚相手を選ぶ条件として「3高(高学歴、高収入、背が高い^^;)」という言葉がありました。その結果の強者連合としての婚姻率は、実は高かったりするそうです。
 でもね、大きな会社でも倒産は免れないし、外交関係が悪くなって、戦争状態になるかもしれないし、地震などの災害が起こるかもしれないし、疫病も流行るかもしれない。そんな、リスク・ヘッジはどうしたいいのでしょうか?
 行政が考えればいい?海外に移住すればいい?

 いえいえ、昔のように親族や近所づきあいを密接にすればいいと述べられています。

 私もそう思うようになりました。

p.s. ふと思い出しました先日、高城剛の「ヤバイゼ!デジタル日本」を読んだことを思い出しました。ここでも、ハイブリッド的な選択肢が、今後の社会を生きていくために必要と述べられてます。これなんかも、リスク・ヘッジのひとつかもしれませんね。

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